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京都大学森谷教授が語るダイエットのワンポイントアドバイス
1. 何故太る?肥満の要因とは?
- 肥満とは、摂取エネルギー量と消費エネルギー量のバランスが崩れた状態です。摂取エネルギー量が上回った状態を長年続けていると当然太ります。では、どのくらいバランスが崩れたら太るのでしょうか?その答えは、1kg=7000kcalです(日本肥満学会誌 (2006)より引用)。つまり、1日あたり20kcalというわずかな量しかオーバーしていなくても、1年間継続すれば1kg太るのです。(20kcal×365日=7300kcal)意外なことに日本人の一日あたりの平均摂取エネルギー量は、終戦直後から変化ない一方で、脂肪摂取量は増加をたどっています(国民栄養調査 (2004)より引用)(図1参照)。さらには、自動車の普及などにより、運動量の低下、すなわち消費エネルギー量が低下しているのです。つまり、現代人にとって、脂質摂取量の増加および運動量の低下が肥満の要因なのです。
- また、この他にも自律神経機能の低下も現代人を肥満に悩ます要因です。私達の体重は自律神経によりコントロールされているのです(図2参照)。肥満研究の世界的権威であるJ.A.Bray教授がこのことを1990年に発表しています。自律神経は、①体脂肪の分解および体温を上昇させる(消費エネルギー量の亢進)、②満腹感への作用(摂取エネルギー量の抑制)に関与しています。一方、運動不足、ストレス、咀嚼の少ない食事、冷暖房完備の室内など、現代社会は自律神経を衰えさせる要因に満ちているのです。
2.やっぱり大事!?ダイエットと運動の関係について
- 毎日少しずつでもよいので継続することが大切です。先に述べた、消費エネルギー量のみの観点から見ると、運動による消費エネルギーは実は低く、30分間ウォーキングしても75kcalしか消費しません。これはバナナ一本分に相当するエネルギーです。また、5分の速歩で消費するエネルギー量は20kcalです。しかし、継続は力なりで、1年間続ければ脂肪1kgに相当するのです。つまり、運動は、無理せず長い目でコツコツ行うことが大切です。
- 消費エネルギー以外にも、運動には他のメリットもあります。それは自律神経を鍛えることができることです(Med. Sci. Sports Exerc. (2001)より引用)。運動をしないと自律神経活動が低下し、筋肉が落ちて筋肉量も減ります。いわゆるダイエット(食事を我慢して痩せる)だけでは、せっかく痩せてもリバウンドの可能性が高まるのです (日本肥満学会誌 (2006)より引用)。逆に運動することで太りにくい体質になれるというわけです。
3. これも重要!!ダイエットと食事について
現代人を肥満に悩ます一因として、脂肪摂取量の増加が挙げられます。
脂肪は、
- 満腹感が得られにくく(糖尿病雑誌(2005)より引用)、
- 食後の熱産生(食事をすると汗をかいたり、体が熱くなる感覚)が低く (糖尿病雑誌(2005)より引用)、
- 体内に入ってそのまま体脂肪になりやすい (News in Physio. Sci. (1993)より引用)ことが知られています。
では、どんな食事が良いのでしょうか?それは、お米中心の和食です。
お米は、
- 満腹感が得られやすく (糖尿病雑誌(2005)より引用)、
- 食後の熱産生を高め (糖尿病雑誌(2008)より引用)、
- ほとんど体脂肪にならない (News in Physiological Sciences(1993)より引用)ことが知られています

図1. 摂取エネルギーおよび脂質摂取量の推移 (国民栄養調査(2004)より引用)

図2. 自律神経と肥満の関係 (森谷研究室HPより引用)
4. 効率的なダイエットへの豆知識
食品の中には熱産生を高めるものもあります。カフェイン、カプサイシンなどは自律神経を活性化し、熱産生を高めることが知られています(J. Nutr. Sci. Vitaminol (2007)より引用)。一方で、自律神経を活性化する以外にも、β3アドレナリン受容体を高めることが肥満防止に有効です(図2参照)。葛の花エキスはβ3アドレナリン受容体やUCP1を高める作用を有しまています(日本未病システム学会誌 (2008)より引用)。
ダイエットトピックス
1.β3アドレナリン受容体とは?
β3アドレナリン受容体は、主に脂肪組織に存在します。この受容体が体内のアドレナリンを感知すると、脂肪分解または脂肪燃焼が促進するよう指令が下されます。
2.レプチンとは?
レプチンとはホルモンの一種で、脂肪細胞から分泌され、主に視床下部の受容体を介して、食欲抑制作用やエネルギー代謝亢進作用を発揮します。肥満者では血中のレプチン濃度が上昇することが一般的に知られています。
3. 脱共役タンパク (UCP)とは?
ミトコンドリアでの酸化的リン酸化を脱共役させることで、脂肪などのエネルギー源を熱として消費させる蛋白質です。脱共役蛋白には現在までに5種類存在することが知られており、特に、そのうちの2種類 (UCP-1、UCP-3)については肥満との関連性が報告されています。
4. 白色脂肪組織とは?
いわゆる「体脂肪」のことです。白色脂肪組織には、脂肪としてエネルギーが蓄えられます。特に、内臓に白色脂肪が蓄積することがメタボリックシンドロームの大元であるといわれています。
5. 褐色脂肪組織とは?
褐色脂肪細胞は主に肩甲骨付近に存在しており、前述の脱共役蛋白 (UCP-1)を多数所持しているため、白色脂肪に蓄えられたエネルギー源を燃焼させる役割を有します。
森谷敏夫先生 プロフィール
森谷 敏夫(もりたに としお)
〒606-8501 京都市左京区吉田二本松町
京都大学大学院人間・環境学研究科
応用生理学研究室教授
略歴
1950年、兵庫県生まれ。1980年、南カリフォルニア大学大学院博士課程修了(スポーツ医学、Ph.D.)。
テキサス大学、テキサス農工大学大 学院助教授、京都大学教養部助教授、カロリンスカ医学研究所国際研究員(スウェーデン政府給費留学)、米国モンタナ大学生命科学部客員教授等を経て 1992年、京都大学大学院人間・環境学研究科助教授、2000年から同科教授。専門は応用生理学とスポーツ医学。
生活習慣病における運動の重要性を説き、有酸素運動を推奨している。
主な一般向け著書
- 「人は必ず太る しかし 必ずやせられる」 講談社
- 「ボディ・リストラクチャリング」 森永製菓(株)健康事業部
- 「からだと心の健康づくり」 中央労働災害防止協会
テレビ出演
- NHK : ためしてガッテン、生活ホットモーニング、土曜フォーラム、おしゃれ工房
被取材記事
- 月刊糖尿病ライフ「さかえ」 12回連載
- 京都新聞「おもしろ健康科学」 12回連載
- 毎日新聞「らくらく健康術」 9回連載
- その他掲載記事多数
現在の関心・研究状況
生活習慣病の温床になる肥満のメカニズムに関する研究に取り組んでおり、寝たきり患者や整形外科的に運動が出来ない人々のための骨格筋電気刺激にも精力的に研究を進めている。